HD DVD って一言でいうと何ですか?
DVDの歴史。映像関係の光ディスクでは1970年代にレーザーディスクが開発されました。直径30センチの円盤に映像と音声をアナログデータとして書き込んで、レーザー光で読み取るものです。90年代になると小型化と高画質化の要求が高まって、直径12センチのCDサイズに映画1本分、2時間の映像をデジタルで記録できないかという話が出てくる。これが波長650nm(ナノメートル)の赤色レーザーと当時最新のデータ圧縮方式のMPEG2を使ったDVDのはじまりです。1996年11月に再生専用のディスクが出ました。
DVDはそもそも映像を収録する媒体として開発されたということですね。
そうです。映画のパッケージ媒体ですね。HD DVDもその延長線上で開発されたものです。ディスプレイが大きくなって、映像がハイビジョンになると、DVDでは容量が足りない。ハイビジョン映像を収録する次世代DVDがHD DVDなんです。
DVDを大容量化を実現した技術とは?
青紫レーザーを使えば、同じ面積にたくさんのデータを記録できるからです。
HD DVDが大容量化できたポイントは何ですか?
DVDで使っている赤色レーザーより波長の短い青紫レーザー(405nm)の登場ですね。
どうして波長が短いといいんですか?
虫眼鏡で太陽光を集光すると小さな焦点ができますよね。波長が短ければ焦点の面積はより小さくなります。焦点が小さくなれば、同じ大きさのディスクによりたくさんのデータを記録できるわけです。青紫レーザーのおかげで、30GBのHD DVDができたわけです。
DVDと同様、HD DVDにも3タイプを用意しています。映像などのコンテンツ配布用に再生専用のROM。通常の記録用のライトワンス(R)。書き換えのできるRW。ROMとRの2層30GBがHD DVDの基本になります。この容量でハイビジョン映像を8時間記録できます。
HD DVDがDVDと同じディスク構造なのはなぜ?
ゴミ・キズに強く、DVDと同じ設備を使ってメディアを安価に製造でき、現在の資産も活用できるからです。
既存のDVDからどれだけスムーズに移行できるかですね。単純に記憶容量をあげるだけなら、たとえばDVDとは方式を変えてレーザーを集光する角度を急にしてもいい。焦点のスポットが小さくできますから、記録密度が上がります。我々もこの方式で、保護層0.1ミリの30GBディスクを2001年に試作しました。でもこの方式だと、既存のDVD製造ラインが使えません。
この方法では、ディスクの原盤記録装置を全て新しくしなくてはいけません。ディスクの保護層もDVDの0.6ミリから0.1ミリに変更して、薄い保護層を基盤に貼り合わせる装置も新たに必要です。世界にはDVD製造ラインが2000近くあります。これを全部リプレースするとなると、膨大なコストです。当然ディスクの値段も高くなる。次世代DVDの記事で保護層が0.1ミリか0.6ミリというのはこういう話。
ディスク強度の問題もあります。保護層を薄くすればそれだけキズに対して弱くなる。HD DVDはDVDと同じディスク構造ですから、DVDと同様ゴミやキズにも強く、耐候性もある。いくら容量を増やして次世代だと行っても、値段が高くてキズに弱いディスクでは誰も使ってくれないでしょう。メディアとしての合理性を考えて、HD DVDでは既存のディスクと同じディスク構造を選択したわけです。
DVDフォーラムとは
DVDフォーラムは、DVD規格の制定および、普及促進を図る世界的な組織だ。2004年7月5日現在、世界中の電子機器メーカー、ソフトウェアメーカー、メディアメーカーなど234社が会員となっている。
DVDからHD DVDへの歩み
1995年12月 DVDコンソーシアム発足
1996年 8月 DVDコンソーシアムでDVD-ROM規格、DVD-Video規格が承認される
11月 東芝、世界初のDVDプレーヤー SD-3000を日本で発売
1997年 4月 DVDコンソーシアムがDVDフォーラムに改組
1999年 9月 DVDフォーラムで書き換え型4.7GBのDVD-RAM規格が承認される
11月 DVDフォーら宇で書き換え型4.7GBのDVD-RW規格が承認される
2000年 9月 DVDフォーラムで4.7GBのDVD-R規格が承認される
2001年 4月 東芝、世界初のHDD&DVDビデオレコーダー RD-2000を商品化
2002年 1月 東芝、青紫レーザーを利用した次世代DVD試作機を発表
2003年11月 DVDフォーラムでHD DVD規格が承認される
2004年 1月 東芝、CESにてHD DVDプレーヤー試作機を発表
2005年 末 東芝、HD DVDプレーヤー発売予定
ノートPCでもHD DVDを使える。年末には薄型ドライブがノートPCに搭載されます
ドライブの構造も従来型DVDとほぼ同じです。ピックアップの位置決め機構の精度は上げる必要がありますが、それも特別な技術ではありませんから。ドライブもDVDと同じ展開ができます。技術的に薄型化しやすいので、ノートPC用のドライブも問題なく開発できます。年末にはノートPCにHD DVDのドライブを載せるつもりです。ハイビジョンというと大画面というイメージがありますが、パソコンのモニターやノートPCでも高精細映像が楽しめます。DVDドライブの数は、民生機よりもPCの方が多いんです。
HD DVDに採用された新技術は、動画圧縮のMPEG-4 AVCなど最新の標準化された技術です。
ひとつは先ほど出た短い波長の青紫レーザーです。二つめはPRMLという信号処理技術。3つめが動画を圧縮する最新コーデックMPEG-4AVC (H.264)です。この3つの技術の組み合わせでハイビジョンの高精細映像を8時間以上収録できるようになりました。PRMLというのは、HD DVD では集光スポットが小さくなったために、そのままでは読み取り時のノイズ比率や信号識別のエラー率が増えてしまうんです。PRMLは、信号を補正しながらデータを読み取ります。ノイズに埋もれた信号からでも正しくデータを再生できるわけです。この技術は特に記録型ディスクであるHD DVD-RWでよい影響を与えています。
現行のDVDや地上デジタル放送ではコーデックにMPEG2が使われています。MPEG2とMPEG-4AVCの圧縮率は、2倍以上違うといわれています。つまり同じ画質で2倍以上の映像を保存できます。BSデジタル放送のハイビジョンの映像でいえば、MPEG2では2時間で20GBを超えてしまいますが、MPEG-4AVCならば画質を落とさずに10GB以下となります。
他の記録メディアとの役割分担 - HD DVDは容量あたりの価格が安いので、パッケージの配布やアルバム保存に最適です
HD DVDはもともとハイビジョン映像の配布パッケージとして考えていたのですが、それだけでなく、撮りためた映像の保存アルバムとしての使い方がでてきたわけです。デジタルハイビジョン放送も普及して、HDD録画機の容量はもうすぐギガからテラになるでしょう。そうなったら従来のDVDではあきらかに容量不足ですから。ハードディスクを補完する保存メディアとしてHD DVDが必要とされるということです。
記録メディアに必要なのは容量と価格のバランスです。ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリのそれぞれに長所があります。このうち光ディスクはビットあたりのコストが非常に安いメディアです。そういう意味でも容量が30GBでありながら従来のDVDディスクなみの低価格で提供できるHD DVDは、時代にマッチしたメディアになると思っています。
HD DVD鑑賞時の新機能は?
ナビゲーションの自由度があがります。ネットとの連携もできるようになります。
HD DVDの今後のスケジュール。年内に再生プレイヤーと映画コンテンツがでてきます。映画は当初数十タイトルになるはずです。再生用ドライブを載せたノートPCも年末を目標としています。来年春にはHD DVDつきのHDD録画機がでます。サッカーのW杯前にはHD DVDの録画機が出回ることになります。映画コンテンツは今のところ米国の映画会社が90近いタイトルのHD DVDでの発売を発表しています。ハリー・ポッターもマトリックスもバットマン・ビギンズもハイビジョンで出てくる予定です。
見る上での新機能はインタラクティブな機能が追加されています。たとえば映像を見ながら追加データをインターネットから取り込んでくるような機能です。鑑賞中のナビゲーションの自由度も高くなって、映像を再生しながら画面にメニューやチャプタリストのグラフィックスを重ねたり、別の映像ストリームを背景の映像に合成することができるようになります。たとえば映画の本編を見ているまま、そこに特典映像があわさってくるような使い方です。

