SNSとは - ソーシャルネットワーキングサービスとは
ここで「人間関係の可視化」と「オンラインで提供されるコミュニケーション機能」についてさらに詳しく解説をする。
人間関係の可視化
私たちは生活の中で様々な人々と交流する。家の中であれば家庭の者と交流するし、会社や学校にいけば職場の人間やクラスメートとの人間関係にもとづき交流するであろう。学校の中でも例えばクラスメートもあればサークル仲間、バイト仲間があろう。社会人になっても小学校の時代の同級生の関係や、バンド仲間といった趣味などに基づいた交流があるはずだ。
こうした様々な人々との交流において、お互いの人間関係の距離の差こそあれ、交流を通じて相手のことを知ることになる。深いつきあいの人間同士であれば、お互いの趣味はみちろん身の上の様々な事情も知りうるであろう。ビジネス上のつきあいであっても、仕事に関連する情報交換は互いに行っているはずだ。
しかしどのように深い人間関係を構築しても、相手の全ての交流関係を全て一度に把握することはできない。あえて可能性があるとすれば、例えば相手の手帳の電話番号一覧を見たり、携帯電話の着信履歴や登録済み電話番号などを見ることでどのような相手と交流を持っているかを把握することはできるであろうがそれはあくまで理論上の話であり、相手は決してそのようなプライベートな機器や物に掲載されている情報を見せることはないであろう。
SNSはこうした相手の交流関係を一度に把握できるように可視化する機能を持っている。例えば、ここにAとBの2人がいて、Aが知らないBの交流相手としてO,P,Qの3人がいた場合、SNSではBの交流相手としてO,P,Qの3人がいることを視覚的に表示してくれる(表 )。もちろんAもB、さらにO,P,Qの全員が同じSNSに加入しているという前提であるが、後述するようにSNSに参加する際には交流関係のある人間に招待されて参加するか、あるいは自分と交流関係がある人物を誘って参加させることになるため、大抵の場合知人の交流関係がどのようになっているかを知ることができる。
交流関係が可視化されることで、例えば知人の知人に興味のある人物がいた場合、直接の知人に目的の知人を紹介してもらう、あるいはその目的の知人に直接連絡をとるといった利用方法が考えられる。
コミュニケーション機能
人間関係が可視化されることにより、お互いに自分がどのような人物でどんなつきあいがあるかが公開されるようになる。お互いのことを深く知ることで深いつきあいを生み出す土壌が生まれるため、これを発展させるための様々なコミュニケーション機能がSNSには組み込まれている。以下、代表的なものを列挙する。
フォーラム(会議室機能)
あるテーマの元に集う不特定多数のユーザーが議論や意見交換を行うことができる場である。SNS参加者は自由にフォーラムを作り、参加者を集めることができるようになっている。例えば特定の趣味や興味・関心に基づいたフォーラムもあれば、出身高校別や大学といった組織別のフォーラムもある。日米問わずどのSNSにも標準で搭載されている代表的な機能である。
会議室機能自体は従来のネット上にも無料で利用できるサービスとして存在しているが、SNSにおいては信頼性というクレジットが各々の参加者に与えられることにより匿名性が排除され、より緊密な情報交換が実現されている点が特徴である。
ブログ
SNS参加者が自由に情報を発信することができる機能である。ブログとは文章を作るだけで簡単にWebページを作ることができるシステムであり、従来Webページを作成する際に必要とされてきたHTMLといった専門言語の知識が一切不要なため、ネット初心者でも簡単に情報発信できることが特徴である。
この機能は米国のSNSには搭載されない一方で日本では標準的に搭載されている機能である。日本のユーザーの使い方を見ると、例えば毎日の出来事、思ったことや感じたことをつづる日記もあれば、外出先で気になったものをデジカメで撮影してそれを掲載したりといったように、きわめて身近な人を対象にした情報発信を行っているようである。
特筆すべきはこの書き込まれた日記に対して閲覧者が感想やコメントを載せる機能が搭載されていることで、このコメント機能によりブログを通じたSNS参加者同士のコミュニケーションが活発になっている側面があることである。これについては 章のmixiの事例に基づいて触れることにする。
商品レビュー機能
商品レビュー機能とは、自分が読んだ本やDVD、CD、利用した製品について感想を書き込むことができる機能である。複数の参加者が同じ製品に対してレビューを掲載すると、製品別のページにそれらのレビューが一覧表示されるようになっている。多くの参加者に利用されている商品には多くのレビューが掲載されるようになり、これからその商品を利用・購入する予定のある参加者はそのレビューを読むことにより購入決定の材料とすることができる。
オフライン交流会の開催
先述したフォーラムを通じて交流を深めた参加者同士が、実際にオフラインで顔をあわせ交流する場である。オフライン交流の実施は、SNS企業が定期的に開催をするケースと、フォーラム参加者が自発的に開催する場合がある。SNS参加者同士は先に触れた通り他のネットサービスと比較して匿名性が排除され一定の信用が与えられている事情により、顔合わせに関係する不安を除去することが可能で比較的頻繁に開催されている。日米とわずオフライン交流会は開催されている。ただし、概してSNS企業が定期的な開催を促すところの方がその頻度は高い。
SNSの具体的な活用事例
SNSで提供される機能は以上の通りである。実際にSNSを利用しているユーザーの活用事例をいくつか例示すると、例えばSNS内でコミュニケーションを取ることで普段会えない人との親交を深めてオフラインでの交流を支援するもの、あるいはネット上のとあるサイトで知り合った者同士がSNSを通じて交流を深めていくもの、会社や学校などの組織で一緒に参加することで、組織内における交流を深めるといった事例が代表的なものである。
SNSの目的別分類
SNSと一口にいっても、そのSNSのサービス提供目的はいくつか分類される。それは次の3種類に分類される。
オフライン交流を補完する位置づけのSNS
人と人の信頼関係はオフラインで実際に顔を合わせなければ構築できないという前提のもとで、そのオフライン交流を支援するために提供されるSNS。具体的にはオンライン上でオフラインで関係のある人々とのコミュニケーションを積極的に図るための機能を提供している。日本のSNSの大半はこの位置づけとなっている。
オンライン交流を積極的に促す位置づけのSNS
新たな出会いを求める人をターゲットにしたSNS。米国でSNSが立ち上がった当時のもともとの起源が日本で呼ばれる出会い系のコンセプトということもあり、特に米国で見受けられる。後述するFriendsterがその代表である。ただしユーザーニーズの変化により、異性との出会いに限らずビジネスや趣味・関心に共通点があるユーザーとの出会いを主眼としたものが増加している。
ビジネスを主目的としたSNS
新たなビジネスパートナーの模索や優秀な人材を確保することを主眼においたSNS。代表的な例は米LinkedInである。求人や求職において人脈を用いることで容易に目的の人材を捜し出すことができるだろうという仮説のもとに成り立っている。日本ではこの形態のSNSは2004年12月現在例がない。
SNSの起源
SNSの概念は、米ハーバード大学教授である社会学者スタンレー・ミルグラムが1967年に発表した六次の隔たり理論(6 degrees of separation)に遡る。六次の隔たり理論とは、自分を起点として友人や知人を繋げていけば、世界中の誰とでも6人の知人を会することで繋がることができるというものである。
その後、90年代のインターネットの社会の普及につれて初めて六次の隔たり理論を実践したサービスとして登場したのが、1997年に開設されたsixdegrees.comと言われる。sixdegrees.comは参加者同士が知人を通じて国境を問わずネット上で新たな出会いを見つけることができるというものだが、ほどなくして閉鎖されている。この閉鎖理由については明らかになっていないが、一般ユーザーのネット環境が原因と思われる。当時のインターネット接続はダイアルアップ接続が主流であり、常時ネットに接続できる環境にあるユーザーは限られた。一般社会に浸透していないネットにおいて、オフラインの交友関係に根ざしたサービスを展開しても当時のユーザーには受け入れられなかったものと推察される。
Friendsterを契機としたSNSの再燃
sixdegrees.comが登場・衰退してから5年が経過した2003年3月、米国でFriensterと呼ばれるSNSがサービス開始した。Friendsterはミルグラムの六次の隔たり理論を忠実に再現しており、その後に登場する数多くのSNSの見本とされる。同サービスは開始3ヶ月で100万人の参加者を集め、2004年11月時点で1,300万人を誇る世界最大のSNSへと成長している。
このFriedsterを契機に米国では数多くのSNSが2004年にかけて立ち上がり、2004年末の時点で数百もの多様な形態のSNSが存在している。代表的なものとして、求人・人材探しを目的としたLinkedIn、検索サービスと組み合わせたEureksterやSpoke、世界最大の検索会社Google社員が社内ベンチャーで立ち上げたOrkutなどが挙げられる。
なお、sixdegrees.comが受け入れられなかった一方でFriendsterを代表とする2003年以降に登場したSNSが受け入れられた背景として、ネット環境の変化と活用方法に変化があったことが挙げられる。2000年頃から世界的に普及が加速したADSLや光ファイバー技術を活用したブロードバンド接続が一般家庭に入り込み、日常生活におけるインターネットの利用が手軽になった。さらに携帯電話や携帯情報端末からインターネットに接続する環境も整備されてきた。インターネットがより身近に、日常生活に浸透してきたことで人々はネットで展開される多様なコンテンツを経験していた。そこへオフラインの交友関係という身近なコンテンツを基本としたSNSが現れたことで、多くのユーザーが飛びついたと想像できる。
Orkutを模範として日本でもSNSが登場
Friendsterが急速に会員数を伸ばしている事実は複数のニュースメディアが特集で取り上げたが、Friendsterの存在が日本におけるSNSの注目を促したわけではなかった。火付け役となったのは2003年1月に検索会社Googleの社員がリリースしたSNS「Orkut」である。
Googleは既に多くのユーザーの支持を受けたブランドであり、ネットで検索することを「ぐぐる」(英語圏では検索するをGoogleという)と言われるほどに知られた会社である。その会社が新サービスを始めたということで多くのユーザーから注目を集めた。2004年10月時点で全世界で200万人、日本ユーザーに限定するとおよそ2万人となっている。
このOrkut人気に目をつけて国産のSNSを開発、2月から3月に相次いで登場したのが本論で中心に取り扱うgreeとmixiである。greeは楽天株式会社に勤務する田中良和個人がOrkutやFriendsterに魅せられて立ち上げたSNSであり、一方のmixiは就職転職情報サイトを運営していた(株)イー・マーキュリーが立ち上げた。Orkutに注目が集まっていた時期もあることから、両サービスは順調に参加者数を伸ばしていった。
これを契機に、SNSへの新規参入が相次いだ。( )に示すように、2004年3月以降に非常に多くのサービスが登場した。米国及び中国でSNSを立ち上げたフェアオークスや、インターネットの黎明期から同窓会サイトを運営しているゆびとま、新興ベンチャー企業のサーチテリアやLife On、低料金のウェブホスティングで人気を集めていたPAPERBOY & COなど多様な企業が参入してきていることも、SNSの将来性に魅力を感じてのものだろう。


